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ナオが真剣な顔をしたから、どんな話をされるのかと思ったら、カツラとメガネのことだった。なんだ、それか。
「いや、なんか、姉さんがさ、付けて行けって言うから、カツラもメガネも、していただけ。やっぱり、こうしてありのままの姿でいると、カツラもメガネも重たいから、いらないかもね」
「……タロ、お前、鏡を見たことないのか?」
「え、あるよ?」
なんでそんなあたり前のことを聞かれたのだろうと疑問に思っていたら、ナオに「お前の目は節穴か!」と怒られてしまった。
「いいか、タロ。この学園は9割がゲイとバイだ」
「え、ああ、うん。それ、知っているよ」
「知っているなら、カツラとメガネをつけなさい」
「えー、無い方が楽だよ」
「お姉さんの気持ちを無下にしたら駄目だろ!」
「あ……」
俺、なんて最低なことをしようとしていたのだろう。
ごめんね、姉さん。カツラもメガネも、姉さんがくれた大切なものなのに。
「ナオ、ありがとう。俺、目が覚めたよ」
「……いや、御礼を言われるようなこと、俺、していないし」
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