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―――――と、いうことが昔あったんだよね」
俺は行きつけの喫茶店で、5歳年上の男の人を呼びだして昔話をしていた。男の人は「懐かしいな、今でも許せん」と乱暴にミックスジュースをかき混ぜながら、溜息を吐く。
現在、俺は20歳。叔父さんの学園を卒業し、社会人になって、2年が過ぎたところ。で、5歳年上の男の人は、変わらず理事長を務めている俺の叔父さん。
「そんなことよりさ、ユウダイ」
俺は自分でもびっくりするような甘えた声が出る。
ユウダイは、ポカンとした顔をして俺を見つめる。
「俺、ユウダイ叔父さんが、好きなんだ」
ずっとずっと小さい時から。
自分自身、認めたくなくて誤魔化したりしていたけども。
「……タロ、それはどういう意味で?」
「きっと叔父さんと同じ意味で」
叔父さんが俺に好意を寄せてくれているのは知っていた。
でも、俺自身が、それを素直に受け止めることができなかった。
「俺、大人になったよ。まだまだ未熟だけど、叔父さんの隣に、胸を張って立てるように、なれるように、頑張るよ…」
「頑張らなくていい。タロはタロであれば、充分だ」
無理をするな、と叔父さんは言って、そっと俺の右手に口づけをした。
俺は恥ずかしくてすぐにその手をおしぼりで拭いてしまった。
fin
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