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「タロ」
「え?」
俺の頭の上から聞こえた声に、身体が硬直した。
ユウダイ叔父さんだ。どうしてここにいるんだろう。
どうしてここがわかったんだろう。
「不思議そうな顔しているな。俺はタロを探す天才だ」
「そう、だったね」
幼い頃、迷子になってばかりの俺を何時でも迎えに来てくれた頼もしい叔父さん。俺はあの時から、叔父さんが特別だった。
『安心して迷え。俺が迎えに行く』だなんて真剣に言ってくれていたっけ。
やばい、泣くな。俺。
泣くんじゃない!
こんな場所でも叔父さんは叔父さんだったんだなってわけわからないこと考えて、ホッとしてどうしようもなくて。
「ユウダイ、俺、俺ね」
「無理に言わなくていいから」
落ち着いてからでいいから、とユウダイは優しく言ってくれた。
ああ、駄目だ、甘えてしまう。
「ありがとう」
俺はなんて身勝手なんだろう。
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