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どうして、みんなは、言葉を平気で使うことができるのだろう。
言葉は、簡単に姿を変えてしまうものだというのに。

つい勢いで言ってしまっただけのことが、ずっといつまでも消えないように。

「……ぁ」

「え?」

目が合った。俺の目の前を通りかかった生徒と目が合った。
生徒は、俺のことを怖々と見ては、困ったようにきょろきょろとする。
どうしたんだろう。道にでも迷ったのか?

「…しょ、く…どう、なら」

そこの角を曲がったところだよ、とまでは言葉にならなかったが、俺は指をさして伝えた。生徒は、すごく嬉しそうに笑って「ありがとうございます」と言った。

「そんな…」

たいしたことなんてしていないと、俺は首を振る。
なのに、生徒はニコニコと笑って、頭を下げる。

そして、生徒は俺が指さした方へと走り出した。

俺は「あ、あの」と声をかけていた。
どうしたんだろう、俺。

「よ、よかったら……一緒に、ごはん」

「?」




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