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食堂がシーンと静まりかえった。副会長が声を荒げたせいだ。
俺はみんなの視線の中で小さくなる。怖い。
もう、これ以上、みんなに嫌われたくない。

「タ、タロっ!」

耐えられなくなって俺は走り出した。一刻も早くこんな空気の中から逃げたかった。震える足は思ったよりも前に進み、俺は無我夢中に走った。
食堂を出て一息つきかけた時、俺の後ろから副会長が走ってくるのが見えて、また慌てて走り出す。

もう、勘弁してくれ。
もう、解放してくれ。

どうして追いかけてくるんだよ。そんなにも俺のことが嫌いなのか。だったら、関わらなければいいのに。心配しているふりなんてしなければいいのに。

「うわ…!」

思いっきり、草むらに突っこんでしまった。
痛かった。でも、これで、俺は逃げ切れた。
だって、副会長、すぐそこできょろきょろと俺の事を探している。
そして見つからないから、そこから去って行った。

「に、逃げ切れた…」

俺もやれば、できるんだと思った。何もしないで怯えてばかりだったけど、嫌なら全力で逃げたらいいのかもしれない。そうしたら、少しは、ほんの少しは救われるかもしれない。叔父さんの力を借りなくったって、俺は俺なりにこの学園生活を乗り切れる。はず、だが……

「食堂ってどっちだっけ。此処どこ?」




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