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ああ、でも、やってしまった、と携帯電話を見つめていたら、三木くんが「うざいなら、うざいって言っていいよ、あいつには」と言う。
「……でも、俺、言い過ぎ」
「あれくらいがちょうどいいって、あの過保護には」
呆れたような顔をして三木くんは鼻で笑う。その姿が、疲れた大人そのもので俺は心配になった。
「三木くん、学生のふり疲れる?」
「あ、まぁな。俺ってさ、賢い大人だからさ、馬鹿なガキって大嫌い」
「そ、そう…」
「でもま、タロくんは別だから」
「へ?」
「理由は教えてあげないけど」
俺の頭をなでながら、三木くんは呟く。
その雰囲気が何処か切なくて、俺は理由を聞こうとういう気持ちにはなれなかった。きっと俺なんかが簡単に踏み込んでいい話じゃないだろうから。
「タロくんの、変に物わかりのいいところが、好きなんだよ」
捨て台詞のように三木くんは口にすると「さ、夜ごはんを食べに行こう」と俺の手を引いた。
俺は三木くんに引っ張られるまま、部屋を出て、食堂に向かう。
人寂しい俺は、握られた三木くんの体温を手放すことができずにいた。
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