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将来の夢、なんて、たいしたものは俺にはない。
ただ、誰かの迷惑にだけはなりたくない。
もちろん、心配なんてされたくない。
そんな気持ちばかりここにある。
「いえ、俺が自分で叔父に伝えます」
叔父さんは心配性だから、すぐに俺に構う。
俺は、俺のことなんかに構って欲しくない。
他にできることがたくさんある。
俺の心配をする暇なんて、叔父さんにはないはずだ。
ちゃんと夜、眠ってくれているだろうか?
「タロくん」
「はい…っ」
叔父さんに電話をかけようとした俺の手を、三木くんは掴んだ。
ビックリした俺の手から、携帯電話が落ちる。
「どうして、敬語になった?」
「え?」
「俺に対してだ。年上って分かった瞬間から、敬語だろ? やめてくれよ、そういうの」
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