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「人違いじゃないかな。俺、苛められているから。学園じゃ」
「え?」
信じられない、とでも言いたそうに三木くんは固まった。
そして「勘違いだったんだ」と一言漏らすと、何事もなかったかのように笑う。
「俺、そういうの、気にならないタイプだから」
大丈夫だよと三木くんは俺の肩に触れた。
俺は泣いてしまいそうになって、必死にこらえた。
「タロくん。困ったことがあれば素直に、身近な人に相談したほうがいいと思う、俺は」
「勇気があれば、出来るんだけどね…」
「何だったら、俺が代わりに言ってやる」
「いい。必要ない!」
俺は声をあげた。
「知られたくないんだ。心配させたくないし、軽蔑されたくない」
「……なら、しかたないか」
「ごめん」
「え、なんで? タロくんは何も悪いことしてないだろ。謝らなくていい」
「……うん、ありがとう」
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