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=山田タロside=


朝起きて、カツラとメガネを見つめる。
今さらもういらないか、これ。
目にしていると辛い。
捨ててしまおうかと考えて、俺は首を振った。
姉さんがくれたものだ。
捨てられるわけがない。
だったら、どうしよう。

「それ、いいな」

「え?」

俺の部屋の中には、俺しかいないはずなのに、声がして、振り返るとそこには無愛想な顔をした、男子が立っていた。

「あ、すまない。俺は今日からここに転校してくる、三木ヒサシというものです。寮の部屋の相室が今はここしかないと聞きました。今日からお世話になります。山田タロさんですよね?」

「は、はい…」

すっかり人間不信になりかけている、俺に淡々と三木ヒサシは話しかけてくる。
だけど、俺は、怖かった。
彼が好意的に俺に話しかけてくれるのが怖かった。

「どうされました?」

三木くんは俺に心配そうに聞いてくれた。
俺は「何でもない」と答える。

転入して、一カ月もの間、理不尽ないじめに合うと、人はここまで駄目になるんだと、俺は驚いている。




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