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寮に帰ると、叔父さんから、メールが来ていた。
叔父さんは可愛いものが好きみたいで、デコメールになっている。
「……」
俺は叔父さんの声が聞きたくなって、電話をした。
知らない環境にいて、なんだか、やっぱりおぼつかない。
だから、よく知っている叔父さんの声を聞いたら、俺は元気になれる気がした。
また明日から、頑張れる気がした。
『タロ。どうした?』
ワンコールで優しい声が聞こえた。
俺は泣いてしまいそうな状態を、握りこぶしでこらえて、笑う。
「叔父さんの学校、すっごくおもしろいよ」
『そうか? 困ったことないか?』
「ないよ」
『ならいいんだけど。変なことに巻き込まれそうになってないよな?』
「うん」
大丈夫だと俺は言う。
大丈夫だなんて思ってもいないのに。
明日、この部屋から出て、学園に行くのが怖いのに。
俺は平気だと笑って。俺は……
きっと叔父さんを安心させるのではなく、俺自身を安心させるために、電話をしているのだと、途中で気がついた。ごめんね。叔父さん。
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