「いやぁ〜寝ぼけてたよ、さっきのは」

笑いをこらえている先輩の顔を見ながら、俺はただ恥ずかしさが募った。
どうしたらいいのかわからない。
恥ずかし過ぎて、息が詰まる。むせる…。やばい、苦しい。

「おい、大丈夫か?」

「……」

もごもごと俺は口を動かす。
声なんて出てないけど、大丈夫ですすみませんそっとしておいてください、と言ったつもりだった。

「救急車か! わかった。すぐに呼ぶよ!」

違う、違う、と俺は先輩に首を横に振って伝えようとする。
だが、先輩はそんな俺を見て「苦しいのか…待っててくれ」なんて言う。
違うんです、俺、ただ、ときめきすぎて、その。

……ていうか、これ、救急車で運ばれた後、大笑いものだよな。
好きな人の笑顔を近くで見過ぎて呼吸混乱。
ふざけている。

「だ、駄目…先輩っ」

携帯を耳にあてそうになった先輩に俺は飛びついてとめた。
だって、いやじゃんか。嫌っていうか、駄目じゃん。こんな理由で救急車呼んだりしたら。

だけど、俺は、とんでもない行動をとったって、その後、知るのだった。




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