六時間目の小テスト。
全く、集中できなかった。

俺は絶対に赤点で返ってくるであろう、回答用紙を、係の人に手渡した。

こんな感じで、俺の総司さんに対する想いも手放せたらいいのに。
どうして簡単にそれができないのだろう。
こっそりと想うだけならいいと思っていたけども、こんなにも総司さんの自由を束縛したいと思うのは間違っている。

「それでは今日の授業はこれまで」

先生がそう言って、教室を出る。
それと入れ違いに、日下部が入ってくる。
俺の方へと歩いてくる。
別に彼が怒っている風ではなかったが、俺は怖くて少し逃げようかと考えた。

「加賀美、ちょっといいかな?」

「…今?」

「ああ、今すぐ」

俺はきっぱりと言葉を紡ぐ日下部に内心おろおろとしていた。
彼の大好きな先輩と俺が同じ屋根の下で暮らしていることが、ばれたのでは、と。

しかし、そうではなかった。

「最近、先輩の様子が変だと思ってな。お前何か、人がおかしくなる時ってどんな時だと思う? ファンクラブのメンツに聞いても、みんなさ、先輩どうしちゃったんだろう、と心配することしかしやがらねぇの」




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