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が、まだ大丈夫だった。
「先輩は忘れられない人がいるって言っていた。その人が運命の人だって」
「それって弟のこと?」
「え? 弟!」
「…知らなかったのか」
余計なことを言ってしまったと俺は焦った。
しかし、新は瞳を輝かせる。
「だったら、大丈夫か」
「大丈夫って?」
「あ、いや、さ。平凡事件って俺たち呼んでいるんだけど、水城先輩の運命の相手ってどんな感じの人ですかって詰め寄ったんだ。その時、加賀美に似ているって教えてもらってさ。焦ったよ、俺。なんだぁ」
あはは…と機嫌良く笑う、新は、急に鋭い瞳をした。
「加賀美のこと、先輩が知っているのが気に食わなかったし、他のメンバーがその話を加賀美にした時も、加賀美は『似ているだけでしょう』とか言ったのも気に食わなかったけど、気にする必要なかったんだ。弟は弟だものね。ああ、運命だとか言うから、変な勘ぐりしてしまった」
「そうだな」
その日、片想い同士、遊園地を無難に遊んで帰った。
楽しかったかと聞かれたら、気晴らしになったと俺も新も言うだろう。
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