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つまらないものでも見るような目で、新は吐き捨てる。
「ファンクラブって言っても、あんなの、ただの情報共有ツールみたいなものだよ。自分の損になるようなことは誰もしない。抜け駆けだって、しようと思えば、誰だってできる。ただ、水城先輩に相手にされるとは限らないけどね」
「そういうものかよ」
怖いな、と俺は呟いた。
「怖いよ。だって、みんな本気で恋しているんだよ。知っている? 憧れと、恋は別だって」
「そうなのか?」
「そう、憧れは、相手を尊重する傾向が強いけどね、それが、やがて、恋に変わると、独占したくなるし、一番じゃないとイライラする。毎日が不安でしかたない」
「嘘、お前、不安なの!」
「そうだよ。すごく不安。怖いんだよ、水城先輩が、誰か一人を大切にする日がくるのが!」
「どうしてだよ、それは自分かもしれないって思わないのか?」
「思える? まさか。俺は知っているんだよ」
「知っているって何をだよ?」
俺はヒロのことがばれているとしたら、ヒロはこいつに酷い目にあわされるんじゃないかって、ビクついた。
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