小さな手。俺の手を温めてくれた小さな手。

俺の父親は俺が幼いころから浮気したり、離婚したり、再婚したり、離婚したり、再婚したり、金銭トラブル起こしたり、離婚したり、同棲したり、なんだり、大忙しの人だった。
その影響もあって、知りたくないものも知り、見たくないものも見、また聞きたくないものも聞き、育った。
俺の家庭事情を知る者はみな、同情の目を向けてくるだけで、俺には何も言わない。
それもしかたないことなんだろうと、子どもなりに俺は悟り、受けとめていた。
それがまた可愛げのないガキだって言われたりもした。

感情そのものがなくなりつつあった頃、俺に弟ができた。
弟って言っても血なんて繋がっていない。
でも、運命だって思った。
おかしい話だ。でも笑い話じゃない。
本気で、俺はそう思った。

『大丈夫?』

弟は俺にそう聞いた。
俺は『大丈夫だけど?』と答えた。
『でも辛そうだよ』と弟は俺の手を握って、首を振った。

驚いた。

俺、ずっと、辛かったのか、とその時、気がついた。
そして、俺は初めて年相応に泣いてしまった。
弟…いや、ヒロはずっとそんな俺の傍に居てくれた。

まぁ、俺の父親のせいで、すぐに離婚して、ヒロとは離れ離れになったけども。俺は君を忘れた日なんてなかった。いつかきっとまた出会えると信じていた。




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