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「あ、あの…」
メモに書かれた家のインターホンを押したら、先輩が出てきた。
俺は言葉を失ってしまった。
「……チッ」
「え?」
今、先輩舌打ちした?
まさか、先輩がそんなことするわけないじゃないか、俺。疲れているのかな。ああそうだ疲れているんだ。だから、今目の前に先輩がいるように見えているんだろう。きっと本当は別人なんだろうな、この人。
「聞いてねぇーし」
「?」
乱暴に家の中に入って行くと彼は「どういうことだよ!」と叫んだ。
彼は先輩に似ている。だけど、先輩じゃない。先輩は優しいし、舌打ちなんてしないし、怒鳴ったりしない。
でも声が、顔が、身体が、先輩そのものだった。いや、
「気のせいだ、気のせいだ」
俺は自分自身に言い聞かせる。しっかりしろよ、俺。
頬を叩いて顔を上げる。
「わり、入ってくれ」
再び俺の目の前に姿を現すと「話しは今聞いたから」と、先輩に激似の彼は俺を家に招き入れてくれた。
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