12
「総司さんは、優しいから」
「俺は優しくないよ。ヒロに気に入られたいだけだよ」
「え?」
「いや、その、深い意味はないんだ。あるけど、て、いや、ない」
瞳を泳がせて、総司さんは言葉を探しているように宙を見つめていた。
そして「たった一人の兄弟じゃないか」と言う。
だけど、俺にはわからなかった。
兄弟だからって片づけられていいことなのだろうか。
血も繋がっていない、成り行きで一つ屋根の下で生活をともにしているだけの俺を。
兄弟だからって。
「大丈夫」
グルグルと考えだした俺に気がついたみたいに、総司さんはそう言った。
「え?」
何が大丈夫なのかわからなくて、間の抜けた声が出た。
「ここではヒロを責める人はいないよ?」
「……」
「だから、我がまま言ってくれていいんだよ。好きに生きていいんだよ」
大丈夫だよ、と総司さんはまた繰り返し言う。
- 45 -
[*前] | [次#]
目次に戻る→
以下はナノ様の広告になります。