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「総司さんは、優しいから」

「俺は優しくないよ。ヒロに気に入られたいだけだよ」

「え?」

「いや、その、深い意味はないんだ。あるけど、て、いや、ない」

瞳を泳がせて、総司さんは言葉を探しているように宙を見つめていた。
そして「たった一人の兄弟じゃないか」と言う。

だけど、俺にはわからなかった。
兄弟だからって片づけられていいことなのだろうか。
血も繋がっていない、成り行きで一つ屋根の下で生活をともにしているだけの俺を。
兄弟だからって。

「大丈夫」

グルグルと考えだした俺に気がついたみたいに、総司さんはそう言った。

「え?」

何が大丈夫なのかわからなくて、間の抜けた声が出た。

「ここではヒロを責める人はいないよ?」

「……」

「だから、我がまま言ってくれていいんだよ。好きに生きていいんだよ」

大丈夫だよ、と総司さんはまた繰り返し言う。




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