「あの、その、お兄さんって呼んだ方が…」

いいのかなって思って聞いた。だって俺のこと弟だと先輩が思ってくれるのだから、俺だって先輩のことはお兄さんと思いたい。
少し胸が痛む。
なんでなんだろう。

「いや、いいや。俺、名前で呼んで欲しい」

呼んでくれたことなかったよね、と先輩は首を傾げた。

「総司って呼んで?」

「…!」

「嫌かな?」

「いいい、嫌だとか、そんなのじゃなくて、その、あの…っ」

俺はわたわたと瞳を動かす。落ち着かない。落ち着けない。
身体が宙に浮いたみたいに、ふわふわする。

「………ヒロ?」

「あ、の、その……。そう、じ、さん」

「もう一回」

「総司さん!」

精一杯、呼んだ名前に、先輩、総司さんは愛おしそうにほほ笑んだ。
あれ、胸の痛みなくなって、今度は、泣き出しそうだ。俺。




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