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「……ヒロはさ、水城のこと、好き?」
ポツリと、生徒会長は、呟いた。俺は突然のことに、頭が回らなくなった。
そりゃあ、好きだけど。好きだけど…。
どうしてだろう。
それをこの人に言ってはいけない気がした。
「あ、困らせてごめん」
気にしないでくれと生徒会長は退屈そうに遊園地の歴史本に目を落とした。
そして一息つくと「俺さ、俺は…何でもない」と何回も繰り返し、顔を赤くして、困ったように俯く。
俺が生徒会長を困らせているように思えていたたまれない。
「あの…俺に、お気遣いなくて、大丈夫です」
「……っ」
「!」
泣き出しそうな顔で、俺は抱きしめられた。
生徒会長は人懐っこいのだろうか。前も抱きつかれた記憶がある。と言っても昨日のことなんだけど。
抱きつかれた俺はどうしたらいいのか考えた。
突き飛ばすのもあんまりだし、でも、もしも先輩がこの場に来て、この状態をみたら、きっと怒るだろう。
先輩は、俺と生徒会長が関わるのを嫌がっていたし…
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