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そう、何かあるわけがない。そう思って、いつも通り帰宅すると、そこには日常がまっていませんでした。
「母さん、なんて…?」
「だから、好きな人が出来たの。でもね、子持ちとか言ったら嫌われそうだから、隠していたの。でも一緒に暮らそうって言ってくれて、私、その人と一緒になりたい。でも、ヒロのこと秘密にしていたの。今さら、ヒロのこと話すこともできない。だから、お願い。お母さんのこと思ってくれるなら…」
「わかったよ。わかった。その誰だかわからないけど、母さんの友達のところでお世話になればいいんだろ」
茶番に付き合う気分にもなれずに、俺は結論だけを口にした。なのに、目の前にいる女は感情論を持ち出そうとする。くだらないな。どんなにも綺麗に事を片づけようとしてもやろうとしていることはかわらないというに。
「もう何も聞きたくない。お幸せに」
俺はそれだけ言い捨てると、かつては母親だと思っていた女からメモを受け取り、簡単に荷物をまとめ、俺の面倒を見てくれるっていう人の家に向かう。
もうあんな女のいるところにいたくなかった。
「………でも、水城って」
俺は夜道独り言をつぶやく。
母親面をした女にあんなこといわれたからショックなんだろうな。
だから、お世話になるだろう人の名前が先輩と同じことに変な期待をしている。
何処かに救いを求めているんだろうな。
馬鹿だ。馬鹿だな、俺。
人生なんて悲しいことや辛いことの方が多いのに。
期待するだけ馬鹿なのに…!
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