3
「行き、たい、ですっ」
駄目だやめろとか、後先考えろとか、そういった全てのものが何処かへと消えてしまった。俺はただ「行きたい」と言った。嘘じゃない。でも
「行きたいですけど…」
と弱虫の俺は続けて打ち明けた。
「けど?」
「誰かに会ったりしたら、俺」
とくにファンクラブの人たちに会ったりしたら…、とか、俺なんかが先輩の隣を歩いて、遊園地で遊ぶだなんて…、とか、たくさんたくさん、思考が巡る。
あと少しでショートしそうだ。
「ヒロ、大切なのは、行きたいって気持ち」
「?」
「行きたいなら、行きたいでいいと思う。でも、不安なことがあるなら、それを取り除けば、オッケーだと思う」
先輩は遊園地のチケットをちらつかせて笑った。
「じゃあ、学校のある日に行けば誰にも会わない。みんなは学校にいるしな」
「………でも、授業…」
俺はそれだけ言うと黙り込み、首を横に振って、そのあと小さく頷いた。
俺はどうしても先輩と遊園地に行きたかった。
- 36 -
[*前] | [次#]
目次に戻る→
以下はナノ様の広告になります。