「行き、たい、ですっ」

駄目だやめろとか、後先考えろとか、そういった全てのものが何処かへと消えてしまった。俺はただ「行きたい」と言った。嘘じゃない。でも

「行きたいですけど…」

と弱虫の俺は続けて打ち明けた。

「けど?」

「誰かに会ったりしたら、俺」

とくにファンクラブの人たちに会ったりしたら…、とか、俺なんかが先輩の隣を歩いて、遊園地で遊ぶだなんて…、とか、たくさんたくさん、思考が巡る。
あと少しでショートしそうだ。

「ヒロ、大切なのは、行きたいって気持ち」

「?」

「行きたいなら、行きたいでいいと思う。でも、不安なことがあるなら、それを取り除けば、オッケーだと思う」

先輩は遊園地のチケットをちらつかせて笑った。

「じゃあ、学校のある日に行けば誰にも会わない。みんなは学校にいるしな」

「………でも、授業…」

俺はそれだけ言うと黙り込み、首を横に振って、そのあと小さく頷いた。
俺はどうしても先輩と遊園地に行きたかった。




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