第2話




「遊園地ですか?」

「そうそう、今度の日曜日にどうかな?」

先輩は焼き餃子を食べながら、再度、俺に聞く。静かなリビングに広がるよくわからない、そわそわ感に、俺もそわそわしてしまう。

しかし、先輩の左手には、すでにチケットが握られている。

なんなの、これ?
有無を言わせない方向なの?

「………誰かに見つかったら」

先輩のことを陰で慕っている人たちに、俺は何処か罪悪感を感じていた。
だってそうだろう。俺もみんなも同じ高校生で同じ学校に通っているのに、俺は先輩の弟で、みんなは他人。
おかしいんじゃないだろうかと、考えてしまう。
こうして一緒にいることさえ、恐れ多く、また胸がギュッとなる。
つまり、幸せすぎて逃亡したくなる。

「俺は、先輩の隣を、歩く度胸なんて…」

ありません。と言おうとしたら、先輩はとても悲しそうな顔をした。俺は慌てて俯いてしまう。これじゃ、まるで、俺が落ち込んでいるみたいじゃないか。
と、必死になって顔を上げると先輩は「俺だってないよ」と微笑んだ。

「俺だって、ヒロと歩くのも」

「…え?」

「こうして一緒にいるのも、一杯いっぱい、で、そんな度胸ないよ?」




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