5
「とりあえず、ネギと餃子の皮」
俺は投げつけられたものを拾い、水城に差し出すと「食べ物は粗末にしたらいけないって親に言われてるだろ?」と言った。すると二人は少し寂しそうな顔をして「そうだな」と言う。
なんだよ、俺、何かよくないこと言ったかよ。
「まぁ、今日はおとなしく帰るわ」
じゃあなと言って、俺はヒロの手に唇づけをして走り出した。
ヒロは突然のことにぽかーんとしている。
水城は見るに堪えない顔をしている。
「俺の方が、ヒロのこと好きだから!」
俺はそう言って微笑んだ。ヒロは少し嬉しそうに微笑んでいたように見えた。
「馬鹿言うな」と水城はすごい形相で俺を睨み「俺の方が、ヒロのことす、すす、す」と古典的なことを超まじめにしている。
「す?」
俺は大爆笑して、聞いた。
なのに「なんでもないよ」と、水城は澄まし顔。
完全に俺を無視し、ヒロに微笑む。
ヒロは言葉を忘れて、ほわーんと水城に見とれていた。
ヒロ…君は、爽やか美形笑顔に騙されている!
でも、悔しいな。
ああ、本当、二人の世界。
そんな空気をまとわれたら、すごく寂しいじゃないか。
ヒロは俺の、ヒロ、なのに。
- 25 -
[*前] | [次#]
目次に戻る→
以下はナノ様の広告になります。