「…………」

「…いや、お前は何も悪くないよ」

「そうだ、悪いのはみんな、このストーカー野郎だ」

「お前な。全て俺のせいにするなよな。水城だって、怖い顔して、ヒロのこと怯えさせて。そんなんでヒロのお兄さんだなんて言うなよ、マジで」

「え?」

ヒロが情けない声でゆっくりと顔を上げた。
信じられないとでも言いたそうに、水城を見つめている。
その瞳は戸惑いを含んでいるが、どこかキラキラとしていて、嬉しそうで。
俺はしまったと思った。
言わなければよかった。

「何、お前そんなことも言ってやってないのかよ、俺には教えておいて」

ここで黙っていたら、何だか俺だけが損をするような気がして、嫌味を言う。
だが、水城の奴は俺に反論することもなく、スーパーの袋を地面に落とした。
力が抜けたように、奴はよろめく。

「せ、先輩っ」

そんな情けない姿の水城が心配だったんだろう、ヒロは俺の右手を潜り抜けると、水城のもとへと駆け付けた。

「大丈夫ですか?」

必死になってヒロは水城に聞いた。水城は涼しい顔をして爽やかに「ヒロがいるから大丈夫」なんて言いやがった。俺、引くわ、お前の執着具合には。




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