長ネギが、俺とヒロの間を通り抜けた。
突然のことに俺は驚いて、しばらく、固まった。
ヒロも固まっていた。

次は餃子の皮が飛んできた。

「……今晩、水餃子なのか?」

素朴な疑問がテンパって口に出た。
するとすごく不機嫌な声が「いや、焼き餃子にするよ」と聞こえた。

「…先輩」

「香山、ヒロから離れてくれないと、次は、ひき肉がお前の頭を直撃するぞ!」

「あ、わかった。離れるから、その迫力のない台詞やめてくれ、ギャグにしか聞こえないし」

「俺は本気だ」

怖い顔をして【学園の王子様】は眉を寄せる。
その顔、写真に写して、学園中に配ってやりたいよ。本当。
というかさ、ヒロが怯えているだろう。馬鹿。

「……俺だって本気だよ」

水城にそう言うと俺はヒロの頭を右手で抱きかかえた。あんな水城の表情をヒロに見せるのは駄目だと思った。俺でも怖いよ、そのキレ顔。

そして、しばらく、俺と水城は黙ったままにらみ合う。
するとヒロが座り込んで小さく口にした。
「ごめんなさい」と。




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