先輩のことを覚えてないとはどういう意味だろうか?
国語の授業をそっちのけで俺は考えていた。

もちろん先輩のことはよく知っている。ファンだもの。
でも、朝のあの一言は違う意味を含んでいたような気がする。
ていうか、ていうか、どうしようか?
国語の授業が終わって休み時間に入った時、俺のクラスの入口に先輩の姿が見える。いや、学校では秘密にしておけ的なこと昨日は言っていたし、ここはシカトかな。うん。

「おい、加賀美、なんか、先輩がお前のこと呼んでいるみたいだ」

「は!?」

どういうことですか、先輩。
俺はおどおどと先輩のところへと行く。
すると、先輩は「落し物」とか言って、俺を見つめた。

「……あの、これは」

先輩が俺に差し出した、可愛いピンク色のハンカチに包まれた横20センチ縦10センチ高さ10センチくらいの固体を見つめて首を傾げた。

「お弁当じゃないかな? 朝、君が、鞄から落として行くのを見て届けに来たんだ。ほら、ここにクラスと名前が書いてあるだろ?」

な? なんて悪戯っ子のように先輩は笑う。
そして小さな声で「朝渡すの忘れていたんだ弁当」と表情一つかえずに俺に伝えてくれた。

でも、先輩。こんなことしたら、きっと明日から、弁当がその辺の床に転がっている風景が続きますよ。貴方に弁当届けて欲しい生徒なんてたくさんいるし。




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