「へぇ、そこで出会ったのが、今のお嫁さんか」
電話越しに西野さんが笑う。でも、なんか、怒っているような…
「なんで、不機嫌なんですか。俺の嫁との出会いを聞いてきたのは西野さんの方じゃないですか?」
俺が告白をした夜からずっと毎晩西野さんは俺に電話をかけてきていた。これって期待してもいいのかどうなのか、俺としては悩んでいるんだけど、率直に西野さんと電話が出来るのは嬉しいので難しいことは考えないようにしている。
で、今日の電話の話題がどうしてか俺と俺の嫁(ギャルゲのヒロイン)の馴れ初めだった。俺が話しだしたんじゃない。西野さんの方から話を振ってきたんだ。だから、俺は当時のことをありのままに話した。不登校していたなんて格好悪いけど、俺はそれに後ろめたさなんて感じていない。だって、そんなの過去のことだから。今は今だし。

「いや、まさか、そんなにも馬鹿な小説のようなストーリーがあったなんて思わなかったんだもん…」
「西野さん?」
「はぁ…。続きは?」
「えとですね、それから、俺は家に帰ってゲームをするんですよ。はじめは女の子ばっかり出てきて怖かったです。でも、プレイボタンを押したら、俺の嫁が、俺の名前を聞いてくれたんですよ! びっくりでした。誰も俺になんて興味ないと思っていたのに、嫁は『お名前教えてね』って俺に笑いかけてくれたんです。初めて会ったのにですよ。すっごい嬉しかったです。そのうえね、会話が苦手な俺のために向こうがたくさん話してくれるし、俺のこと理解してくれるし、味方でいてくれたし、誕生日はお祝いしてくれたし、あと俺が次の選択を迷っていても嫁は文句も言わずに、ただじっと笑顔で待っていてくれたんです。それから…」
「もういいっ」
「え、西野さん…?」
俺、何か、いけないこと言ってしまったかな。それともまた一人楽しくなって、退屈な話を西野さんに話していたのか…
「ごめんなさい、西野さん…俺」




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