ギャルゲーにはまったのは中学生の時だった。
当時の俺は引っ込み思案で内気な少年だった。何をするにしても物事を考え過ぎる傾向があった。そのせいで仲良くなりたいと思っていたクラスメイトの友達もできず、不登校を繰り返し、ついには完全に学校に行かなくなった。
それでも俺の家族は俺に何も言わなかった。はじめはいつ怒られるのかとひやひやしていたんだけど、俺なんかのことで何の反応もないことを悟ると、だんだんと寂しさばかりが募っていった。

ある日、暇つぶしのゲームを買おうと思って、店に行った時、急に俺の肩が誰かに叩かれた。補導だとしてたら振り払って逃げてやると、警戒していたら「な、な、頼みたいことあるんやけど」と俺の肩を叩いた人はニカニカと笑う。俺と同じくらいの年の人だった。けど、後で知った話、彼はただの幼顔なだけの成人男性だった。
「君ってね、ギャルゲーとかやったことある?」
「ぎゃるげーぇ?」
俺は初めて聞く単語に首を傾げた。俺は赤い帽子の似合う叔父さんのゲームしかやったことがないから。
「やったぁー、君みたいな子を探していたんや」
彼はとても嬉しそうに俺の手を握った。そんなにも誰かに親しみを持たれたことがない俺は戸惑った。だけど彼はそんなこと気にもせずに「これな、俺が作ったんやけどな、恋愛シュミレーション言うんやけどな、だいたいでいいねん、遊んで、率直な感想くれへん? あ、うーと一万くらいまでならバイト料として渡すし…な?」と早口に言う。俺はちゃんと聞きとれずに「えっと…」と口ごもると、彼は「すまん」と言って、今度はゆっくりと説明してくれた。俺はそれが嬉しかったから、つい、彼の頼みごとだという、ゲームを遊んで感想をいうのことを引き受けてしまった。
ここが俺の人生の分岐点。

「え、お金いらへんの?」
彼はバイト料はいらないと言った俺に驚いた顔をした。お金はいくらあっても嬉しいことだけど、それよりも大切なものがあるような気がして「いいんです」と俺は笑った。




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