「も、もしもし」
俺は慌てて電話に出る。すると向こうから笑い声が聞こえてくる。
「そんなに焦らなくてもいいのに」
「……だって」
早く出ないと、西野さんが寂しがるんじゃないかって思って…とまでは言えなかったけど、感のいい西野さんは「余計なこと考えなくていいよ」と照れくさそうに呟いた。
よかった。同じ男なのに告白して気持ち悪がられている可能性はないな。うん。
「あの、どうかされました?」
ホッと一安心した俺はこんな夜にっていってもまだ九時前なんだけど、西野さんから電話があることに首を傾げた。
「……上条くん、用事がないと電話しちゃダメかな?」
「そんなことないですよ」
「ならいいじゃん、暇なの、なんか話して」
「えー俺にネタはないですって」
「じゃあ、何か好きな歌でも歌ってよ」
「本当に歌いますよ?」
「うん」
その後俺は四曲歌った。西野さんはずっと静かに聞いているだけだった。
「あの…俺の歌なんて聞いても楽しくないんじゃ…」
「え、なんで?」
「だって、ほら、西野さんの知っている曲なんて一つも…ないと…」
「僕が頼んだんだよ、そんなの気にしないし。むしろ僕が好きじゃなくても、上条くんが好きなら、聞いてもいい曲だと思う。たぶん、じゃ、あ」
ありがとう、と言い残して西野さんは俺の言葉を聞かずに電話を切った。
たぶん、恥ずかしかったんだろう。

俺は切れてしまった携帯を見つめ、どうしても西野さんに今すぐに言いたいことがあったから、今度は俺から電話をかけ「楽しかったです、また暇つぶしにかけてくださいね」と言うだけ言うと、西野さんの返事も聞かずに電話を切った。お互い様だ。




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