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その日、帰宅すると俺は夜の八時を待たずに山田に電話をかけた。すると「どうしたんです、寂しくて死にそうになったんですか?」と山田の声が受話器から響いた。俺は「そうじゃない」と笑った。
「あ、わかりました。俺にもう電話するなって言いたいんでしょ」
「え、なんでわかったんだよ」
「声を聞いたらわかります。誰でもいいからっていう、あの孤独が溢れてしまいそうな西野さんじゃなくなっているんですよ。よかったですね」
「え?」
「見つけたんじゃないんですか、西野さんの涙を救ってくれる人」
「な、なな」
「図星ですか。それは良かったです…」
「ちょ、山田…どうしたんだよ」
「さて俺どうしたんでしょ。なんでこんなにも一途に西野さんのこと好きなんでしょうね。わかりませんが、西野さんがもう、俺の電話で孤独を少しでも紛らわす必要ないって言うならしかたないです。さようならですね」
「ああ」
今までありがとうと言えない僕はただ心の中で言っておいた。
「あ、そうだ、俺、携帯の電話、このままだと思うんで、何かあったらいつでもかけてくれていいですよ」
「…は、なんで山田がそこまでするんだ」
「わからないなら、どうぞ、西野さんの孤独を埋めてくれようとしている人にご相談してみたらいいじゃないですか。100%の可能性で押し込められ…あっと、西野さんノーマルだったんですね。女性の場合なら、泣かれるかもですね」
「黙れ、山田」
「はいはい。それじゃあ、また機会があれば」
「じゃあ、な」
山田のことは嫌いだったけど会話するのは嫌いじゃなかった。いつも人のことを見過ごしていたから。でもズルズルと続けたこの関係は終わりだ。
僕には上条くんがいるから。夜寂しくなったら、彼に電話をしたらいい。だから…





第七話 完結



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