「何がいつもはあと50分も電話してただ。ざけるな。俺と山田はもう何の関係もない他人だ。もう、切るぞ、いいか、電話切るからな!」
「………だったら、切ったらいいじゃないですか?」
「は…?」
「なんで俺の意思を聞いてから切ろうとするんですか?」
「え?」
「うっとしいなら、普通、勝手に切って、着信拒否したらいいじゃないですか!」
「…………ちっ」
ガタンッと受話器を電話に戻した。腹が立つ、そんなにも着信拒否されたいならしてやる。だいたいな、お前なら、どうせ、携帯から繋げなくなったら、会社の電話なり手を変えてかけてくると俺は思ったから、ほっといたんだ。なのに、それをまるで、俺が山田の電話を待っているような、こと言うなんて、気持ち悪いんだよ!

八時十五分。
僕は何をしているんだろうって、あまりにも空虚感にさいなまれた。
別に、いつもは山田の相手をしているから、忙しかっただけ。
昔のように平凡なつまらない時間を取り戻せたのに…僕は創作に集中できないでいる。
おかしいだろ、どれだけ山田の電話さえなければ、作品が進んだだろうかって後悔していたのに。せっかく時間があいたら、なんだか、電話の後味があるいせいか、進まないし。笑えない。

「もう…やだ…寝よう」
考えるとしんどい。答えなんてわからないんだもん。
どうせ…考えても辛いだけだもん。


『理想は高く持ちましょう!』
ふと上条くんの言葉を思い出して、僕は首を振った。理想なんて…どこにあるんだろう。こんな世界の。




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