今のは空耳か。いや、僕の勘違いだ。山田が、あの山田が僕の心配なんてするわけがない。もしそういう風に聞こえるようになっているとしたら、それは社交辞令だ。
なのに、なんだって、こんなにも切ないんだ。
「西野さん。怒ってますか、昨日俺がいつもは1時間は話続ける電話を45分で切ってしまったから、寂しかったですか?」
「……昨日切ったのは僕だよ」
「わ、やっと声聞かせてくれましたね。嬉しいです。俺。でも…元気ないみたいですけど何かありましたか?」
人の気など知らない山田は本当に優しい声で聞いてくる。
「俺、西野さんに冷たく怒鳴られるのも寂しいことろありますが、西野さんがそんなにも元気がないのはとても寂しいです」
「お前が構ってちゃんなだけだろ」
「そうですか?」
「じゃなかったら、なんだよ。なんで昨日あそこまで言ったのに、電話してくんの?」
「そんなの好きだからですよ?」
「俺の何を、そういうんだ!」
「何を言うのかわかりません。ただ愛おしいんです。ただ、幸せにしてあげたいんです」
「じゃあ、簡単だ。俺のこと構うな。そうしたら元気になるし、幸せになれるだろ」
「嘘ですっ!」
「!」
「西野さんはなんでそんなにも…俺の気持ちを信じてくれないんですか?」
「は?」
「誰でもいいから自分のこと理解して、それでも愛してほしいって、全身で訴えている癖に、どうして、俺の気持ち信じてくれないんですか?」
「黙れ、山田っ」
「嫌です、答えて下さいよ!」
「……っ」
「切らないでください。まだ10分も経ってないです。あと50分以上、いつもなら電話してましたよ」




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