「なのに…僕は怒りん坊だ…」
「西野さん…大丈夫ですか?」
東くんは心配そうに僕の方を見つめる。
駄目だな…僕はなんだかんだ言って東くんに甘えている。だって、職場で竜北と上条くんが居ない時にこんな弱音を吐くなんておかしい。
「あ、いや、違うんの…っ」
何が違うのか僕自身わからない。ただ、東くんに余計な負担をかけまいと必死にそう言った。だって、東くんは優しいから真剣に僕の話を聞いて、考えてくれるだろう。僕の言ってほしいことを言ってくれるだろう。だから…もう…
「西野さん、俺に気なんて使わなくていいですよ。俺、西野さんが心配なんです」
「……う」
「俺にできることがあるんなら、何でも力になります」
キラキラと偽りのない瞳で東くんは言う。正直、本当に何でも力になってくれそうだ。他の人が同じセリフを僕に言うものなら『だったら僕の前で出来もしないことを言うな』と怒るだろうけど…。
「あの、ね、今でも電話がかかってくるの」
結局僕は自分が慰めて欲しいばかりに、もやもやを東くんに向けて吐き出す。
「前に僕が言っていた、ピンク文庫のあの人から」
「あ、西野さんのこと気に入ってストーカーまがいなことした人ですよね?」
「うん、その人」
不謹慎にも覚えていてくれたんだと僕は胸の中が温かくなった。
「好きだって言ってくるの…正直、怖いから、僕にはそんな気はないって言ったら、自分が頑張るとか言ってきて、それがムショウに腹が立つのっ」
「怖いと思うならしかたないですよね。もしもあれでしたら、俺が西野さんの代わりに電話に出て説得を試みてもいいですし、それから、怒っても西野さんが辛いだけです。あまり自分を責めないでください。西野さんを追い詰める相手のほうが悪いんです」
「そうかな…? なんだか、元気出たよ。ありがとうね、東くん」
東くんは自分は何もできていないって悲しそうに言ったけど、僕はただ聞いてほしかっただけなんだ。ごめんね。でもいつも君の優しさには救われているよ。




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