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次の日、高良の家から自宅に帰る途中の電車の中で西野と会った。偶然だね、と西野はとても居心地の悪そうな顔をしたけど、俺は「一緒に途中まで帰ろう」と声をかける。俺と西野の最寄り駅は同じだし、家もそう遠くはないから。
「うん、その代わり、駅から降りて僕が話すまで何も言わないでね」
ぼそぼそと西野は俺の方を向くことなく呟いた。俺は「わかった」と返事をして、本当に駅から降りて少し歩いて、西野が「どうぞ…」と話す許可をくれるまでずっと黙っていた。沈黙が苦手な俺にしては上出来だと思う。頑張った。

「そのさ、スカートって…西野はそういうの好きなの?」
西野のことを知らない人には、きっと女の子にしか見えないだろう西野の格好に俺は突っ込んだ。さすがに見過ごすのもわざとらしくて…よくないかなって思ったから。
「…実に言いにくいことなんだけど…これ」
顔を真っ赤にして西野はピンク色のビニール袋を俺に押し付ける。
「え?」
「何をぼさっとしてんのさ。あげるってい言ってんだ!」
「俺に、これを、西野が?」
「何か文句あるのっ…せっかく買ってきたのに」
「そそんな、もらうよ。ありがとう」
俺はお礼を言うと、すぐにピンクのビニール袋を開けた。そこには可愛らしいアクセサリーとか熊さんの人形とか…俺が前に欲しいなって思っていたごつい指輪が入っていた。
「竜北、は、忘れたかもしれないけど…今日は僕と竜北が出会って、2年になるんだよ」
本当は明日渡そうと思っていたんだけどね…と西野は苦笑いした。
「あ…西野…」
俺はすっかりと西野との記念日を忘れていたことに罪悪感を感じる。でも西野は「笑ってくれたら充分いいよ」と一人歩きだしてしまう。俺は慌てて西野の後を追った。
「あ、そうだ、竜北。女装したのは…ただね、女の子のお店に男の格好で入るのが恥ずかしかっただけ。あと男物の指輪のラッピングを頼むのも、男の格好じゃね」
「でも、その恰好を知り合いに見られるほうがよっぽど…」
「……それはさっき竜北に会ってわかった。次からは普通に男のままで行くよ」




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