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高良の家につく頃には、俺たちはいつも通りに戻っていた。さっきまであんな真剣な話をしたことも忘れているかのように。

「じゃあ、俺、夜ごはん作りますね?」
「うん」
高良の家にのこのこ行くのはよくないと思ったのは何時間前のことだろう。俺って馬鹿なのかもしれない。だけど馬鹿でも、それでもいいと、そっと瞳を閉じた。

こんなにも誰かを愛おしいと思ったのは…はじめてだ。
君が泣かないなら、俺は一人泣いてもいいと思った。
理性がなくなっても、俺はきっと本能でも、高良は大切にしないといけないんだってわかっているから、無理やりに傷つけることなんてしないだろう。
そう思う。
それが軽いと自分でもわかっている。だけど、他にどうしたらいいのかわからない。

「高良ぁ何かお手伝いできないかな?」
「え、と…じゃあ、食器運んでもらってもいいですか?」
「もちろんだよ」
俺はにっこりと笑うと食器の用意を始めた。昔は何も知らなかった高良の家のこと、今じゃきっと誰よりも知っていると思う。それが何処かくすぐったくて、幸せだと思う。それに、はじめは一つしかなかった食器も、いつからか、俺がよくここにいるという理由で二人分になっている。これってちょっと同棲しているカップルみたいじゃないか。密かにそう思って俺はこっそりとほほ笑んだ。

「あ、竜北さん」
「何ぃ?」
「なんだか、俺たちって恋人同士みたいですね」
「え、ああ…そうだな」
高良は絶対に何も意識してないのが、ちょっと悔しいと思った。




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