「だいたいさ、うるさいんだよ。僕は僕の好きなようにしていたいのに、友達がさ。それに今回のことも僕の知らないところで起こったことだし断ってんのに、出版社から電話来るわ、ストーカーとして訴えてもいいくらいのことされるし、なんでだよ…本当…」
「しかたないよ、それだけ、西野の作品には魅力があるんだよ?」
「魅力…? これさ、ただのエロ本だろ。こんなの誰にだって書けるじゃないか。なのに、どうしてもってうっさいから一冊だけ、投稿されたもんは文庫本化を許可したけど、それが間違っていたんだ…まじ、手紙とか来たら、僕しょげちゃう」
「西野さん…」
「東くん、僕、やっぱり我がまま言っているかな?」
「そんな、こと…」
プロになりたくてもなれない人もいるのに、もしかしたらそういった人を蹴落として入選したかもしれないのに、嫌だって、言っているのは駄目かな…と西野さんは続けた。俺はそれを聞いてやりきれない気持ちになった。どうして西野さんがこんなにも悩まないといけないんだろう…
「そんなことないですって、ただ、あの、手紙、批判とかあるんですか?」
「批判された方がいい。だって、僕は納得なんてしていないんだ、あんなストーリ。なのに、面白かったですとか続き書いて下さいとか、エロ最高! とか来たら…っ」
勢いよく、西野さんは顔を伏せてしまった。たぶん、泣いているのだと思う。なのに、竜北さんはにっこりと笑い「西野、いいことを教えてあげる」と西野さんの肩に触れた。
「ペンネームを持つということは、自分じゃない人を作るってことだから」
「え?」
俺と西野さんは首を傾げる。
「結局それも自分だけど、ペンネームさえ変えたら、読者には別人だし、ほら、この文庫本はペンネが西野のいつものやつとは違うだろう。じゃあ、これはこれとして存在してもへこまなくていい。西野の一部分には変わりないけど、いつもの可愛らしいヨウの作品が汚れるわけじゃないし、人の感性はそれぞれだから、こういうのが好きな人もいる。俺たち創作する側は、区別はしても切り捨てたら駄目だよ。何かを誰かを否定したら駄目だよ。そんなの辛いし、悲しいから」




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