第五話


PN.竜北広文さん。23歳のA型。3月26日生まれ。
俺の大好きな彼のプロフィールはそれしか知らなかったけども、それでも充分過ぎると思っていた。だって、彼自身と彼の作品があまりに好きだから。
はじめて参加したコミケで彼に出会うまでは、俺は何も知らない、ただの夢見る男の子だった。

「あ、東?」「竜北さん?」
コミケにて彼のスペースの最前列に来たら、俺は頭が真っ白になりかけた。それでも、俺は「一部ずつ」と作品を購入して、再度彼の方を見上げた。ああ、やっぱり俺が愛して止まない同人作家は、最近俺が移動した部署の先輩だ。そういえば、先輩と彼の名前が同じだったなとか思いながら、ちっとも嬉しいと思わないのは、ただ手の届かない所にいる彼が大好きだったのと、そんなにも現実味をもってそばに居てほしくなかったのと、そんな自分勝手な話になる。
ほら、そばにいたら、嫌いになるかもしれないだろう。今までは見えなかった何かが見えてきたりしてさ。ああ、それが、怖い。

「あのね、東くんもBLとか好きなのかな?」
衝撃の事実を知った次の日、職場にいくと可愛らしい顔をした西野さんがおどおどと俺に聞いてきた。ばらしたのかって竜北さんの方をちらっと見つめると、彼は「東、西野はBL小説書いてんだよ?」と笑った。
「え!」
俺は驚いて叫んでしまう。すると西野さんが「そんなに変かな?」と落ち込んでしまった。そういう意味じゃなくて、西野さんって可憐だから、この世界に関係ない人だとばかり…
「違います。驚いてしまって…こんな、部署全員、腐男子だったとか…」
「えー駄目? いいじゃんか。趣味を同じとするものが集まってんだ。理解しあえるだろ!」
竜北さんは楽しそうにそう言った。でも俺は「だったらいいですね…」としか言えなかった。




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