「あの、迷惑かけてしまうってわかっているんですが、その、一緒に居てもいいですか?」

しばらくの沈黙の後、震える声で高良が言った。
竜北さんも西野さんも「当たり前だろ」って怒っている。
辛そうな顔を誤魔化そうと必死に高良は「でも…迷惑かけてしまうと…」と首を振る。
俺はどうしたらいいのかわからなかった。

――――大衆の声が素敵だと思いませんか?
私はいつでも人並みに人生を歩んでいるフリをしていました。
そこから離れてしまっている人を馬鹿にして、
自分はあたかも普通なんだと安堵していました。
私は間違いなどしていないと、過信していたのです。
大好きだったゲームも捨てて……
本当の気持ちを否定して、そこで何を得たのでしょうね。
『竜北さん、だって、好きなものは好きだからしょうがないんですって』
『もしもそうだとしても俺は気にしないです』
『傷ついても俺は自分を持っていたいんですよ』
いつの日か会社の廊下ですれ違った時、
ずっと異質だと俺が嫌っていた部署の新人が先輩に告げた言葉に
どうしてだろうか、泣きだしたくなった――――

高良、
人生の分岐点があったとしたら俺はきっとあの日、
俺は、作り出した「私」から元の「俺」に戻れたと思ったんだ。

好きなものは好きだからしかたないし、
俺はそれを気にしないし、
傷ついても自分を持っていたいと思ったんだよ。
だから…




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