もしかしたら俺の読み違いじゃないだろうか、と散々一人で格闘して『社長室』とかかったプレートとにらめっこしていたけども、どうやら本当のようだ。
何の断りもなく、急に開いたその扉からは「君もよかったら入りなさい」などと、パンフレットでしか見たことない社長が現れたから。

「よろしいんですか?」
俺はいちお礼儀として尋ねる。社長は「気を使わなくていい」と俺の肩を掴むと強引に社長室に俺を引きずりこんだ。ちょっと乱暴だよ、社長さん。
「…いっ」
失礼だとわかっていても、掴まれた肩があまりにも痛くて俺は顔をしかめた。すると「上条くんを乱暴に扱わないで」と高良の声が聞こえる。
「あははは、高良、俺が高良の知り合いを乱暴に扱うわけないだろ?」
なぁ? なんて俺の耳元で社長は囁いた。でも俺の肩を掴んでいる手に、あり得ないほど力が加わっている。

いや、今はそんなことよりも、高良と社長ってどういう関係なんだろう。

「ね、君、どうしてここに来たの。もしかして俺の高良を追ってきたのかな?」
俺の、と言った社長に俺は内心…いや明らかに嫌悪感を表す。
「なんだよ、その生意気な顔は、俺はそういった奴が大嫌いなんだよ!」
社長はそう言って俺に拳をあげた。殴れるものなら殴ってみろ、訴えてやる。

「父さん!」

「え?」
俺は高良の声で不思議な単語を聞いたような…父さんって、誰が? まさか、まさか…
「高良、なんて顔をしているんだ」
信じたくないことに社長は高良の父さんという言葉に返事をする。そして高良は辛そうな顔をして「…ごめんなさい」と呟く。何、この状況は!




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