トイレに行って、用事を済ませると、俺は平日の昼間から何をしているんだろう、と自己嫌悪した。トイレットペーパー使いすぎてごめんなさい。洗面所では手を馬鹿ほど洗って水道代かけてごめんなさい。

「……え?」
廊下の方で何か音がして俺は気になってトイレから顔を出すと、高良がそこでこけているのが見えた。俺は手をタオルで適当にふくと、慌てて、駆け寄った。
「大丈夫か、高良!」
「わ、上条くん。えと、大丈夫だよ?」
何処か目線を逸らして高良は言った。何かを誤魔化そうとしている時の高良の目だ。かといってそれがわかっても俺には追求できない。俺が小心者だからだ。
「ならいいんだけど…」
「心配してくれてありがとう」
明らかに無理に笑うと高良はこけた時に落としてしまったダンボールを積み上げて抱える。どう見たって、高良には量が多すぎる。
「手伝うよ?」
「え、いいよ、上条くんは部屋に帰って!」
必死に、断られて俺は、これは何かあるなと確信した。だから、いったんは「じゃあ、気をつけてな」なんて言って、部署に戻る振りをして、高良が荷物を運ぶ先を追った。
もしもここの会社を本気で首になったら、俺はスパイなんて向いていると思うくらい華麗な尾行だった。
俺が後ろをつけていることなんて気が付いていない高良は「持ってきました」と扉に向かって声を上げる。すると扉が開いて、高良はその中へと入っていった。
俺も後に続こうとしたけども、その扉の上にかかっているプレートを見て、動けなくなってしまった。

「社長室…?」
普通、社長室って最上階にあるものじゃないのかなって俺は思ったけども、実際にここにあるんだから、ここで合っているのだろう。間違いじゃないんだよな。俺の。




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