「あのさ、高良は独占欲とか感じたことある?」
夜ごはんを一緒に食べながら俺はそれとなく聞いてみた。
「独占欲ですか?」
「そ、次の新作はそういう話も書いてみたいなって思って」
誤魔化すように俺はそんなことを口走った。そんな予定なんてしてなかったのに。
「ほら、俺って鈍感だからあんまりわからなくてさ」
自分でも怖いくらい口は嘘をついていく。高良は箸を机に置くと、考え込んでしまった。
「あ、余計なこと聞いちゃったんかな。ごめんね」
何、を、俺はこんなにも必死なんだろう。焦っているんだろう。

「いえ、俺、竜北さんの作品の役に立てるなら何か思いつかないかなって思ったんですが…俺、三次元にあまり求めないですから…何かを独占したいとかあまり考えたことないかもしれないなって、自分でも今驚いてます」
「え?」
「現状にいつも満足しちゃう病気みたいなものなんです。俺、あまり何かを望むことってないんですよ。失われなければいいとかそれくらいで」
淡泊だとよく言われますねと恥ずかしそうに高良は笑った。

「じゃあ、高良は誰かに何かした後に、お礼とか欲しいと思わないのか?」
「え、思わないですよ。だって、それは俺がそうしたいと思ったら、したことでしょ?」
「そうか…」
「あ、ですが、ありがとうって言ってもらえたら、俺は嬉しいです。俺でも誰かの役に立てたんだなって思えて…」
そう言いながら、高良は何処か遠くを見つめた。その瞳はあまりにも深く、寂しがっている。
まるで、自分がいらない子だと思っているかのような…

「高良!」
「はいっ」




- 30 -


[*前] | [次#]
目次に戻る→


以下はナノ様の広告になります。
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -