高良はロクに携帯をちゃんと持ち歩かない奴だった。例の帰りが遅かった時も心配になって電話をかけたら、すぐそこの机の上で携帯の着信音が響いた。またある日は、携帯とチャンネルを間違えて職場に持ってきたこともあった。さすがにこれは一度っきりだったが、高良はもとから携帯を持ち運ぶということをあまりしない。
以前、携帯に関心がないのかって俺が聞いたら、高良は『他のこと考えるとわすれちゃうんです』と苦笑いをしていた。

だけどここ三日、俺が寝込んでからずっと高良は携帯をちゃんと持ち歩いてくれている。何かあったら連絡してくださいねって言ってくれる。その高良の心配そうな顔が、とても愛おしくてしかたない。
きっと、俺のことで今頭が一杯なんだろうって…

「何、ドキドキしているのかな…俺は」
まだ熱が下がらないせいだと瞳を閉じた。
とても安らかだ。



*****


「ただいまです」
平然とした顔で、高良は帰ってきた。だが、俺は、またしてもずぶ濡れになった高良を前にしてやりきれない気持ちになった。


高良は、自分のことに頓着がない。
まるで、自分のことなんてどうなってもいいかのように。
他人のことばかりで…




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