「あ、俺たち会計してないんじゃ…っ」
カラオケを出て少しして気がついた。どうしよう、今さらカラオケボックスに帰って、お金払うと言っても店員さんを困らせてしまうだけだろうか。
「高良、俺がちゃんと払ったから」
「あ、なら、よかったぁ…」
「本当、高良は優しいな」
「えーそんなことないよ」
「そうか?」
「うん、そうだよって、あ、カラオケ代いくら?」
俺は鞄から財布を出すと上条くんに聞いた。
「いやぁ、今日は俺が誘ったわけだし、いいよ」
「でも…」
「いいって言ったんだ、だからいいんだよ、高良」
「う、うん…」
なんか悪い気がして仕方ない。

「高良、次の会議、頑張ろうな!」
俺が俯いて歩いていたら、上条くんはそう言って俺の背中を叩いた。そして「星がきれだぜ」と空を指差した。

「星が…?」
俺には星が見えなかった。
「ははっ、高良、騙された!」
星なんて見えません。と、上条くんはすごく楽しそうに笑った。
「けどよ、俯いていたら、損するぞ?」
「え?」
「もったいないじゃん、できることはやってみようぜ!」
俺がそばにいてやるし、なんて上条くんは言って俺の手を握ってくれた。
星なんて見えないのに、今の俺には、空がキラキラと、輝きだしたような、気がした。




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