カラオケボックスに入って、俺たちは曲をいれることもなく、ドリンクバーをついで持ってくると、カラオケ機の音を完全に0にした。

「高良、俺、今のままでいいのかって思ってんだ?」
「今のまま…?」
「踏み出したら、今のほんのちょっとした幸福も失うかもしれない。けどよ、俺はもう我慢できないんだっ」
勢いよく俺の手を握って上条くんは言った。

「次の会議の新商品提案で、上の奴らの腰を抜かしてやろうぜ!」
「でも…」
「大丈夫だって、高良はいつも時間を見つけては面白い企画書つくっているじゃん。それをさらにさ、四人で見直して、誰もがあっというような、提案をしてやんだよ!」
「上条くん、気持ちは嬉しいけど、会議初めてだよね…?」
「え、ああ、そういえば、ここにきては初めてかな?」
「……こんなこと言いたくないんだけど、会議には俺たちも参加するけど、完全無視だよ」
「は?」
「だから、もとから、参加していることに意味があるのか全く分からない。発言権がまるでない。前、西野さんがそれに怒って会議室を出ていったこともあったけど、そのことさえ誰も咎めもしなかった」

「ちょっと、待て、俺はずっとお前ら三人は、やる気がないから何も言わないのだと…」
「無視されることが何十回も続いたら、ただ座っていることしかやる気になれないよ」
「…そんなの参加する意味なくないか?」
「参加はするよ。俺たちのちょっとした抵抗なんだ」
「抵抗?」
「そ、上は俺たちに参加してほしくないけども、俺たちの名前を会議の名簿から外すようなことはできない。だったら、参加するしかないでしょ?」




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