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「高良、誤解だぞ、俺たちもいつも仕事熱心だよね、西野」
「そうだよ、僕なんて、さっきからずっと今度の夏コミの新作を考えていたんだもん」
などと、急に立ち上がって言うものだから、周りに積んであった大切なものが勢いよく床に散らばった。
「「「いやぁあああ!」」」
今日は、そんなこんなで、まともに仕事はできず俺たち三人の悲鳴に終わった。
上条くんはそんな光景に冷たい目を見せず、おどおどとBL物を拾うのを手伝ってくれた。
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「あ、高良、今日は一緒に帰ろうぜ!」
会社を出てちょっと駅に向かって歩いたところで、上条くんが俺の背中を叩いた。
「そういえば、上条くんって…家は?」
「俺の家は、あそこ」
ちょうどそこの信号を渡って100メートル歩いたらつくだろう所をさして上条くんは笑った。
もう、すぐそこが上条くんの家じゃないか。
「…あ、わりぃ。口実だったんだ。ちょっと高良と話がしたかったんだけど」
「え、俺と話?」
口下手の俺はめずらしいこともあるんだと思った。俺と話したがるなんて言うのは、小さいときから一緒の友達くらいだと思っていたからだ。
「大切な話なんだ」
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