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竜北さんがお茶を買いに行ってしまった。
俺は竜北さんのお母さんと二人っきりになってしまった。
「あの、いつも、お世話になっております」
「いえいえ、うちの馬鹿のほうがお世話になっているわ。いつも家に転がり込んでいるみたいだけど、ご迷惑じゃないかしら?」
「そんな、俺、一人暮らしで寂しいんで、ちょうどいいですよ」
寂しいって、言って、俺は驚いた。俺は、ずっと一人暮らしで寂しかったんだろうか。そんなこと考えたことなんて、なかった、竜北さんが俺の家に遊びに来る前は…
「えっと、高良くん。質問してもいいかしら?」
「はい、俺でよければ」
「変なことなんだけど、広文って、最近変わったと思わない?」
「……俺も、変わったと思います」
「よね、昔なら、ここにも帰ってこなかったわよ。それが今日は、あの子から、ここに来るって言うし、驚いたわ。あとね、私再婚しちゃったんだけど、その結婚式にもこないし、旦那のこと、すっごく避けていたのに、旦那ともまだぎくしゃくではあるけど、話してくれるようになったの。本当、誰かに、説教でもされたのかしらって、あ、私ったら、ベラベラと恥ずかしい。高良くん、なんだか、つい話しちゃった」
ごめんねと竜北さんのお母さんは言った。俺はそんなこと気にしないでくださいと微笑む。
「ありがとうね」
「え?」
「広文と出会ってくれて」
「いえ、そんな…俺…」
お礼を言うなら俺の方なのに、慌てふためいて両手を振った。

「そんな、お母さんこそ、竜北さんを生んでくださってありがとうございます」
「高良くんっ」
嬉しいと、お母さんは俺に抱きついてきた。
本当、親子そっくりだ。




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