泣くのは竜北さんがこの家を出て行ってからだと決めていた。なのに、俺の手からハンカチを受け取ると、竜北さんは俺のことをぎゅっと抱きしめた。
「高良、一緒に来てほしいって言ってもいい?」
「……え」
「その、一人じゃ、怖いから、同伴して欲しいんだ!」
「は、はい…」
俺はそのまま竜北さんに手を引かれて家を後にした。



*****


「ちょっと、めちゃくちゃ可愛いじゃないの!」
「!」
竜北さんの実家に着くと、竜北さんのお母さんが瞳を輝かせて俺に飛びついて来た。血筋なのかもしれない。
「母さん、気易く高良に抱きつかないで!」
「…?」
竜北さんが怒るところなんて初めて見た。
「あ、ああ、ごめんね、高良。驚いた?」
「いえ、そんなことないですよ」
俺は、お母さんに抱きしめられたのも、竜北さんが怒ったのも、確かに驚いたけど、引きずっているわけじゃない。だから、大丈夫ですって答えた。
「あ、そうだわ、広文、お茶を買ってきて」
「えー、家にないの?」
「あるけど、ないわ」
「……わかった、コンビニでいい?」
「ええ」




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