竜北さんのお見合いの当日がやってきた。
お見合いをすると言われたその日からずっと今もずっと俺は気分が晴れない。
おかしいだろ、俺。
竜北さんが新しい一歩を踏み出そうとしているんだから、ここは応援しないといけないのに。

ここずっと俺の家にいた竜北さんは結局俺の家から、お見合いに行くことになった。ちょうど今、スーツに着替えて、髪の毛を整えている。普段、ウニクロばかりのきている寝癖のひどい竜北さんしか知らない俺は、何処か、寂しい。

「あの、竜北さん」
俺は意を決して「お見合いが終わっても俺の家に来てくれますか?」と聞いてしまった。すると竜北さんは困った顔をして「いいのかな?」と言う。やっぱり、竜北さんも俺から離れて行ってしまうのかな…。

さようならじゃないと願った。
俺のささやかな幸せが何ものにも奪われないことを、
いつでも願っていた。
今以上なんて求めないからって、でも。

「あ、もう、時間だ」
待ち合わせまで一時間を切ると竜北さんはワックスのふたを閉めて、玄関へと向かう。

もう…時間なのか。

「竜北さん、ハンカチ忘れてますよ!」
俺は慌てて、テーブルの上に置きっぱなしのハンカチを持って玄関へと走った。
「あ、本当だ」
「お見合いなんですから、しっかりしてくださいよ」




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