=高良side=

積み重ねてきた時間。そんな言葉を聞いて俺は迂闊にも泣き出しそうになった。
幸せだからじゃなくて、切なくなった。
だけど、そんなことを言ったら、気持ち悪がられると思って俺は、ただ、首を振る。
「大好きな人の大好きな作品なんですから、それくらいは…と」
場の雰囲気を変えようと口を開いたら、思いがけない言葉が出てきた。
これじゃ、まるで必死になって陰で番号とか覚えていたってばれる…かな?
「本当に、一つの漫画を描くってすごいことだと、竜北さんのお手伝いをしていて思いました。俺の知らない苦痛もあったり。なのに、コミケでは、笑顔で…そういうのってすごいなって…あ、あれ」
俺は何を言おうとしているのだろう。自分でもわからなくなり、どうしてこのような話になったのか考えた。あ、積み重ねた時間の話からだ。
「…つい、竜北さんの積み重ねた時間って話を聞いて、俺も俺なりに何か伝えようとしたのですが、上手く言葉にできませんでした」
「高良ぁ」
「!」
がばっと抱きしめれられて、俺は驚いた。
「…竜北さん?」
別に抱きしめられるのはいつものことだから、あまり気にしないんだけど…。
あまりにも竜北さんが力一杯に抱きしめるから、どうしたんだろうと不安に思う。
俺、何か、言い方おかしかったかな。竜北さんのこと傷つけたのかな。
竜北さんの腕の中で、俺は一人グルグルと思考の海に落ちていった。

「あ、ごめんね」
しばらくして、嬉しくてつい、と竜北さんは笑って俺から手を放した。
笑っているのに、竜北さん、とても寂しそうな顔している。
「高良…?」
「はい?」
……あれ、俺、いつの間に、竜北さんの頬に手を伸ばして、
「わぁ、すみません!」




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