=竜北side=

もしも偶然が起こったら、いいなって思ってはいたけども、偶然なんて簡単に起こらないのだろうなって、気がついた。正直、お見合いに行くのは嫌だけど、行かないと。
でも、その前に俺は夏コミの原稿しないとな。うん。夏は待ってくれない。お見合いのことはお見合いの日に考えたらいいや。
俺はさっき高良が入れてくれたホットミルクを飲み干すと、鞄の中から原稿を取り出した。
「あ、お手伝いありますか?」
高良は俺の方を向いて笑う。お見合いの話をしている時は俺のことで心配して辛そうだったから、気分が変わってくれたのならよかったと安心した。
「じゃあ、また、トーン貼ってもらってもいいかな?」
「はい」
わかりましたと返事をすると高良はカッターナイフを手に持って、作業に取り掛かる。もう、俺が何処をどうしてほしいとかいわなくても、高良は俺の書いているメモでだいたいのことは理解してくれている。それが、とても幸せ。
「積み重ねた時間って感じ…」
「…はい?」
「え、え?」
不思議そうに高良はこっちを見ている。もしかして、俺、さっきの口に出して言っていた? だとしたら、だとしたら…あ、変に意識しなくても普通のことか。
「高良がね、俺のメモを見て、テキパキと作業を手伝ってくれるのは、俺と高良がそれだけ時間を積み重ねて一緒に過ごしてきたからかなって思って、つい一人言」
もしかしたら、この言葉はギリギリアウトなのかもしれない。けど、以前から、もっときわどいことを俺は言っている。それでも高良は俺の気持ちになんて気付きもしない。だから、これくらい言っても大丈夫だと俺は高をくくっていた。
けど、高良は顔を赤くすると、黙り込んでしまった。
俺、何かよくないこと言ったか?
「あの、あのね、高良」
必死になって俺は言葉を探した。
俺は高良との関係を壊したくないのに…




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